監督3
2009.10.13
その他
『ジョゼ・モウリーニョ』 ルイス・ローレンス、ジョゼ・モウリーニョ 共著
デルレイにずっとプレッシャーをかけさせやがって
反対サイドでプレーしとけと言っておけ
サ・ピントは長期のケガから復帰したばかりだった。
だから体調がまだ万全ではなかった。
さらに、我々のベンチのすぐ前でプレーしていた右サイドバックのキローガが負傷してしまったため、サ・ピントが途中出場することになったんだ。
私はハーフタイムに、サ・ピントに対してプレッシャーをかけていくようにとの指示を出した。
彼は右サイドバックのポジションに慣れていなかったし、ケガから復帰したばかりで、コンディションも万全ではなかったからだ。
するとデルレイがすぐに、後半が始まってから15分間、徹底的にサ・ピントにプレッシャーをかけた。
でも、サ・ピントは闘争心あふれる選手だったから、プレッシャーをかけられたぐらいで簡単に引き下がるタイプではなかった。
デルレイのプレーに対しても屈することなく、彼にチャンスを作らせないように必死に耐えていた。
彼こそ本物のライオン(スポルティングのシンボル)だった。
だが、さすがの彼にも疲労の色が見え始めた。
彼がボールを奪い返そうと、ベンチの私の前を通り過ぎたときだった。
私は「サ、もう疲れたのか!」と声をかけた。
「何!」息を切らしながら彼はそう答えた。
「よく聞け、もう限界なんだろう?」
「バカ言え、デルレイにずっとプレッシャーをかけさせやがって。反対サイドでプレーしとけと言っておくんだな」
すると私は少し意地悪な口調で「覚悟しておけ。すぐに元気いっぱいのクレイトンを投入するからな」と言ってやったよ。
そのときのサ・ピントのびっくりした顔はよく覚えているよ。
「本気か?オレにとどめを刺すつもりだな。殺す気か?」
「お前を殺しはしないよ。ゲームを終わらせるんだ」
モウリーニョがポルト時代、スポルティングと対戦したときのエピソードの一つです。
当時スポルティングにいたサ・ピントとは古くから深い親交があったそうです。
本文中で、活き活きとした試合の雰囲気を感じさせてくれる一節でした。
監督の話はこれで終わります。
キーワード
ジョゼ・モウリーニョ ルイス・ローレンス サ・ピント